2012年01月31日

番外編:007/カジノ・ロワイヤル(1967年版)

 イオン・プロが007シリーズの原作権に目をつけたとき、既に売れていたのが「カジノ・ロワイヤル」だった。『ドクター・ノオ』から大躍進を続ける本家に対し、コメディとして対抗したのが本作。
 冒頭いきなり幼稚なハゲネタからブラックな爆死ネタへつながるエキセントリックさは、モンティ・パイソン調でよろしいのだが、その後の展開がつながらないところが多く、本編は何をやっているのか良くわからないままエンディングを迎える。それもそのはず、監督が5人も(クレジットされていない監督もいるので、もっと多い)いれば「船頭多くして船山に登る」になって当然。ついでに007のコードネームを持つ諜報員も5人登場。大カオスの浅草カーニバル祭りといったところ。主演のはずのP・セラーズの途中退場にも驚かされる。
 とはいえ、ここまで徹底して狂った内容にすれば、それはそれで面白い。まったく笑えないギャグの数々も、ナチュラル・ドラッグのような効果を生み、心地よく頭がクラクラ(笑)。今でも笑えるのは、W・アレンのパントマイムと、マタ・ボンドが使用人に「お前、英語分かる?」と聞くと「ノー」と答える場面くらい。
 前・後編で放送された吹き替えは、ほぼノーカット。ただ、配役はかなりの変化球で、P・セラーズ=浦野光、D・ニーヴン=川久保潔。そのくせ、U・アンドレスは『ドクター・ノオ』と同じ武藤礼子だったりする。このバージョンは80年代末までよく放送されていたので、録画している方も多いだろう。

監督 ジョン・ヒューストン/ケン・ヒューズ/ロバート・パリッシュ/ジョセフ・マクグラス/ヴァル・ゲスト
ピーター・セラーズ(浦野光)/デヴィッド・ニーヴン(川久保潔)/デボラ・カー(水城蘭子)/ウィリアム・ホールデン(木村幌)/ウディ・アレン(嶋俊介)/ウルスラ・アンドレス(武藤礼子)/オーソン・ウェルズ(雨森雅司)/ジャン=ポール・ベルモンド(青野武)/ジョアンナ・ペティット(松尾佳子)

キッチュなオープニングをどうぞ↓
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2012年01月30日

007/慰めの報酬

 シリーズ初の、前作から続いたストーリーの第22弾。アクション映画の経験の無いM・フォースターを監督にしたところ、暴走しまくりでシリーズ最低の作品が生まれてしまうという大惨事を招いた。前作に続き、謎の組織クォンタムを追うボンドを描く。
 007映画としてあまりにひどい出来。なぜそうなってしまったかの理由を、記録として残す義務感に駆られたので、2009年1月30日の読売新聞夕刊の記事をもとに解説する。まず、記事の監督インタビューによると、「ロジャー・ムーアらが演じた女性と戯れるボンド像をあまりにも陳腐と感じた」と言っている。ムーア=ボンドは、007を世界的規模の人気作に押し上げる時期に大貢献しているし、ダルトン、ブロスナンだってファン層を広げるのに貢献してきた。何よりも、世界興収がそれを証明しているのに、「てめえの狭量と石頭で判断すんじゃねえよ!このハゲ!!」と言いたくなる。ついでに「監督に抜擢され、最初はあまり乗り気ではなかった」とのたもうた。007愛が無い奴に監督させるとは、プロデューサーも魔が差したとしか思えない。
 この記事からは、さらに驚愕の事実が明るみにでる。脚本がメチャクチャだと思っていたら、なんとP・ハギスは自作の監督のため未完のまま脚本を放り投げ、監督のフォースターと彼の子飼いの脚本家がロケハンをしながら仕上げたという。こんなんで、まともな映画が出来るわけがない。
 アクションも細かいカット割りとアップの連続により、壮大さに欠き何をやっているのかさっぱり分からない。DVDで見直しても、やはり分からない。この描写力の欠陥は、フォースターにアクション映画の監督としての才能が微塵も無いことを証明している。撮影もヘタクソで、これも監督子飼いのロベルト・シェイファーによるもの。彼は本作までドラマしか撮ったことがないので、どうしようもなかったのだろう。「ジェイソン・ボーン」シリーズのデジャヴのような無能アクションばかりで頭が痛くなった。
 記事の最後でフォースターは「プロデューサーから次回作もと誘われたが固辞した」と言い放つ。プロデューサーは相当頭を冷やしたほうが良いし、二度とフォースターを007に近づけないで欲しい。じゃないと、世界中の007ファンが、D・クレイグ起用のときよりも、もっとすさまじいボイコット運動を起こすだろう(本作は、007ファンには世界的に“シリーズ最低作”のレッテルを貼られているらしい)。
 監督の悪口ばかりになるのも癪なので、自分なりのラストの解釈をば。ボンドが悪役グリーンを砂漠に放置してエンジンオイルを水代わりに与えて去る。その後、ボンドはMから「グリーンがオイルを飲んで頭を撃ち抜かれて砂漠で死んでいた」と聞かされる。これは、非戦闘員の諜報員フィールズを、グリーンがオイルまみれにして殺したことに対し、クォンタムがグリーンを似た手口(オイルを飲ませる)で始末することで、英国諜報局に「手打ち」を暗に持ちかけているような気がした。
 吹き替えは無難な配役。が、ボンドがMの前で「僕」と言った瞬間は卒倒しそうになった。これはマズいでしょう。

監督 マーク・フォースター
ダニエル・クレイグ(小杉十郎太)/オルガ・キュリレンコ(佐古真弓)/マチュー・アマルリック(家中宏)/ジュディ・デンチ(此島愛子)/ジェマ・アータートン(冠野智美)/ジャンカルロ・ジャンニーニ(菅生隆之)/ホアキン・コシオ(長克己)/ジェフリー・ライト(辻親八)/イェスパー・クリステンセン(仲野裕)
※TV未放送のため、DVDの吹き替えキャスト。

予告編↓
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2012年01月29日

007/カジノ・ロワイヤル

 6代目ボンド=D・クレイグ登場のシリーズ第21作。若い頃のボンドを描く、シリーズ仕切り直し編。テロ事件を起こして株価操作により巨額の富を得ようとするル・シッフルに、ボンドが賭博で挑む。
 若いボンドが、失敗ばかりのダメ諜報員として描かれている点が、まず素晴らしい。本作はスーパー諜報員ボンドも、かつては未熟な時期があったという、当たり前のバックボーンを提示しているため、本作を観た後で『ドクター・ノオ』から観直すと、ボンド像がさらに深みを増して見えるという効果がある。「あのダメダメが、ここまで成長したか」という、長年の上司が暖かい目で部下を評価するような気持ちになるのだ(笑)そういった意味で、本作はシリーズで非常に重要なポジションを占めるといえる。
 ほとんど狂犬と化したボンドがやたらめったら敵を殺しまくるのが目新しい。まだ駆け出しで、本人に余裕がないからだろうけど。『サンダーボール作戦』で「ザコは殺さんよ」と言っていたのは、散々ザコを殺してきた結果ゆえなのね(笑)。
 アクションは、狂犬ボンドのパワフルさによって、観ている側が思わず力こぶ出しちゃうほどエキサイティングに盛り上がる。監督のM・キャンベルと撮影のP・メフューの「特捜班CI☆5」コンビによる、スピーディな演出と見事なショットも貢献している。脚本のおかげもあるが、キャンベルの演出・構成は『ゴールデンアイ』より格段に進歩しており、100点満点中300点あげる。
 ドラマ部分の会話も、陳腐にならないぎりぎりで洒落たものになっていて、これは脚本のリライトを担当したポール・ハギスのおかげだろう。見せ場とドラマの配分も良く、2時間半という超尺があっという間に終わる。余韻の残るラスト・シーンもシビれまくる。長年のボンド・ファンも納得する、シリーズ屈指の大傑作といっていいだろう。そういえば、クレイグ=ボンドに決まったとき、ボイコット運動がイギリスなどで起こっていたが、作品を観たらアンチが謝罪したということもあったなあ。キャンベル監督には「よく頑張りましたで賞」をさしあげる。
 また、主題歌も本作を傑作に押し上げることに貢献している。過去のシリーズは、ラブ・ソング的なものや、敵キャラのことを歌ったものばかりだったが、本作では00セクションに所属する者の運命や心得が歌詞になっている。ボンドがこれから受け入れなければならない残酷な宿命が浮き彫りにされるという、シリーズでもかなり異色な主題歌だ。シリーズの他の作品のDVDでは主題歌の歌詞は字幕にならないが、本作だけは歌詞字幕が入っている。歌詞を理解したかとしていないかで、その後のストーリーの印象がまるで変わってきてしまうので、DVD制作スタッフの英断に拍手(TV放送のときは主題歌がカットされていたので、TVが本作の初見の方は、面白さ半減でお気の毒…)。
 TV吹き替えは、クレイグ=藤真秀で新録。藤の声は、小川真司によく似ている低音ヴォイス。大メジャー作の主演を演じる緊張感からか、やや演技が固いが及第点。M・ミケルセンの藤原啓治も、クールな中に狂気を秘めていてなかなかの仕上がりだった。DVD版のブロスナン=ボンドを担当していた横島亘が悪役のひとりを担当している。 

監督 マーティン・キャンベル
ダニエル・クレイグ(藤真秀)/エヴァ・グリーン(冬馬由美)/マッツ・ミケルセン(藤原啓治)/ジュディ・デンチ(沢田敏子)/ジェフリー・ライト(石田圭祐)/ジャンカルロ・ジャンニーニ(西村知道)/シモン・アブカリアン(横島亘)/カテリーナ・ムリーノ(山像かおり)/イェスパー・クリステンセン(大塚芳忠)

予告編↓
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2012年01月28日

007/ダイ・アナザー・デイ

 いよいよシリーズも20作目の節目。記念作品としての超大作だが、ブロスナン最後の作品に。北朝鮮での任務中に捕虜になったボンドが、捕虜交換後に資格を剥奪される。汚名を注ぐため、単独で調査を進めると、謎の大富豪が衛星イカルスを使って世界制覇をもくろんでいることを知る。
 なにかと話題の北朝鮮が、遂に007に登場。でも大人の英国映画なので、将軍様も人格者に描かれている。遺伝子調整によって、東洋人から白人に肉体を新陳代謝させてゆくという驚きの展開や、地上を焼きつくす攻撃衛星、向こう側の景色を表面に転写して姿を見えにくくするステルス・ボンド・カーなど、SF色が濃く出ている。ちなみに、遺伝子調整により肌の色を変えるというのは、実際に研究されている。
 アクションは、冒頭のホバークラフトのチェイス、氷上でのカーチェイスがみどころ。撮影が凝りすぎて、逆にスピード感と迫力を殺いでいるのは残念。007映画としての仕上がりは、可でも不可でもなくといったところ。
 劇場公開時、クライマックスで衛星イカルスが38度線を焼くの見て韓国の観客が激怒したという記事が出たが、これは正確ではない。韓国では38度線を焼くシーンは拍手喝采で、その後ボンドとジンクスが韓国の神聖な寺院の中でラブシーンを演じるところで顔面蒼白になって怒ったということだ。これは当然。日本でも同じことされたら怒るもん。
 テレビ吹き替えは、キャスティングが正直微妙。ボンド以外はDVD版のほうが面白い配役になっている。T・スティーブンスが文学座の今井朋彦(「消臭プラグ」の殿様)だったり、M・マドセンがFIXの立木文彦だったりね。

監督 リー・タマホリ
ピアース・ブロスナン(田中秀行)/ハリー・ベリー(安藤麻吹)/トビー・スティーヴンス(木下浩之)/ロザムンド・パイク(石塚理恵)/リック・ユーン(池田秀一)/ジュディ・デンチ(沢田敏子)/ジョン・クリーズ(塚田正昭)/マイケル・マドセン(諸角憲一)/ウィル・ユン・リー(平田広明)/ケネス・ツァン(松井範雄)

予告編↓
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2012年01月27日

007/ワールド・イズ・ノット・イナフ

 シリーズ第19弾。頭に弾丸がめり込んだため痛覚のなくなったテロリストが、東西につながる石油パイプラインを、恐るべき手段で破壊しようとする。ボンドは彼らを追うが、真の黒幕は意外な人物だった、という007シリーズとしてはちょっと毛色の変わった一本。
 本作から脚本陣が変わり、ストーリーをひねっているが、ひねりすぎてすっきり展開しない結果に。アクションもいろいろと工夫を凝らそうという努力は分かるが、冒頭の単純なボートチェイスが一番良くできたアクションという結果に。パラグライダーのスキー軍団は少し面白かったんだけどね… ボンド映画としては、もう少し盛り上がる見せ場を盛り込んで欲しかった。
 敵役のテロリストが無痛症という設定なのに、それがほとんど活かされていない展開はいかがなものか。しかも最後のボンドとの対決が盛り下がりまくり。迫力も無く、女の尻に敷かれて、シリーズ中で最も情けない悪役だ(トホホ…)。すっかり迫力美女になったS・マルソーと、『ゴールデンアイ』での役柄で再登場したR・コルトレーンは良かったが。
 吹き替え版では、最弱悪役のR・カーライルは古川登志夫の硬質な演技によって、かなり救われている。R・コルトレーンが「心理探偵フィッツ」と同じ玄田哲章なのはGOOD。

監督 マイケル・アプテッド
ピアース・ブロスナン(田中秀行)/ソフィー・マルソー(佐々木優子)/ロバート・カーライル(古川登志夫)/デニース・リチャーズ(佐藤あかり)/ロビー・コルトレーン(玄田哲章)/ジュディ・デンチ(沢田敏子)/デスモンド・リュウェリン(北村弘一)/ジョン・クリーズ(塚田正昭)

予告編↓
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2012年01月26日

007/トゥモロー・ネバー・ダイ:日曜洋画劇場版

 「日曜洋画劇場」でのブロスナン=ボンドのFIX田中秀行で録音されたバージョン。J・デンチも本作以降は沢田敏子に定まる。悪役プライスを羽佐間道夫が担当し、ケレン味たっぷりに演じている。ドクター・カウフマン役のV・スキャヴェリを千田光男が担当し、おかしさと不気味さを併せ持つキャラに昇華させている点も注目。

監督 ロジャー・スポティスウッド
ピアース・ブロスナン(田中秀行)/ジョナサン・プライス(羽佐間道夫)/ミシェル・ヨー(深見梨加)/テリー・ハッチャー(渡辺美佐)/リッキー・ジェイ(辻親八)/ゲッツ・オットー(中田和宏)/ジュディ・デンチ(沢田敏子)/デスモンド・リュウェリン(北村弘一)/ヴィンセント・スキャヴェリ(千田光男)/ジョー・ドン・ベイカー(池田勝)

PSのゲームデモ。ポリゴンがかなりツラい(笑)↓
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2012年01月25日

007/トゥモロー・ネバー・ダイ:初回放送版

 前作の作風がいろいろと問題ありと判断したのか、本作はボンド映画本来のアクション中心の作り。『ユア・アイズ・オンリー』並に上映時間の半分弱がアクションというボリューム。世界的スクープを捏造し、情報操作で巨利を得ようとするメディア王とボンドが対決する。
 悪役が、昔のボンド映画のような誇大妄想狂の富豪に戻っているのは嬉しいが、説得力に欠くのが難。アクションをメインに据えすぎて、ストーリーが薄いのも物足りない。が、アクションは過去のボンド映画のように、トリック・プレイの精神を取り戻していて、ブロスナン=ボンド作品では一番優れている。アバンタイトルの戦闘機での対決での決着のつけ方は、爆笑ものかつ理にかなっていて素晴らしい。ベトナムの密集する民家をすりぬけるバイク・チェイスもスリリング(このアクションは、『ナイト・アンド・デイ』でまんまパクられていた)。さらにバイクを切り刻もうとヘリがプロペラを地面に対して斜めにし、巨大芝刈り機と化して追ってくるアイディアも◎(これは『28週後』で感染者を切り刻むシーンでまんまパクられていた)。考えられる変化球をこれでもかとアクションに盛り込む、本来の“007スピリッツ”が本作にはある。
 デヴィッド・アーノルドのスコアは、全盛期のジョン・バリーを思わせる。あまりにも007の世界観を理解しているので驚いたが、彼は子供の頃から007の熱烈なファンということなので納得。彼の作曲したエンディング・テーマも、ちょっと『ゴールドフィンガー』っぽくてニヤリとさせられる。逆に、シェリル・クロウの主題歌はいまひとつ。アクション大作を彷彿とさせるイントロは良いのに、歌が始まると月並みなブルースに。イントロだけサンバで歌は演歌調になる「焼き鳥サンバ」を思い出した(笑)。
 初放送はフジの「ゴールデン洋画劇場」で、吹き替えは他局のキャスティングを無視。ブロスナン=江原正士という斜め上。ところが、聞いてみると驚くほど違和感が無い。むしろ、悪役のJ・プライス=小川真司のほうが問題か。また過去ボンドが悪役になっちゃってる(涙)。VHS版でプライスを演じた谷口節が、手下の殺し屋に格下げも(笑)。

監督 ロジャー・スポティスウッド
ピアース・ブロスナン(江原正士)/ジョナサン・プライス(小川真司)/ミシェル・ヨー(佐々木優子)/テリー・ハッチャー(田中敦子)/リッキー・ジェイ(宝亀克寿)/ゲッツ・オットー(谷口節)/ジュディ・デンチ(谷育子)/デスモンド・リュウェリン(北村弘一)/ヴィンセント・スキャヴェリ(青野武)/ジョー・ドン・ベイカー(内海賢二)

予告編↓
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2012年01月24日

007/ゴールデンアイ

 訴訟問題で6年間のブランクの後、過去ボンド役候補にあがっていたピアース・ブロスナンを迎えて制作された第17作目。監督には「特捜班CI☆5」で鳴らしたM・キャンベルが大抜擢。本作以降は、「マスク・オブ・ゾロ」や「バーティカル・リミット」などハリウッド大作に進出する。“ゴールデンアイ”と呼ばれる衛星システムをめぐり、ロシアの謎の犯罪組織“ヤヌス”とボンドが死闘を繰り広げる。
 かつての同僚006がヤヌスのボスになっていたり、Mが女性に代わったりと、小ネタも散りばめながら「新たなボンド」を目指した姿勢は評価できる。キャンベルの演出による、フラッシュ映像のようなスピーティなアクションはこれまでの007映画とは異なるタイプだが、その手法は「特捜班CI☆5」で既に完成されていたものの使いまわしで、特に目新しさは無い。ボンド本来の持ち味である“トリック・プレイ”も皆無で、007らしさに欠く。これじゃあ、ボンドが動きがすばやいだけの筋肉バカに見えてしまうよ…
 脚本にも、いろいろと問題あり。“ゴールデンアイ”の設定は『暴走特急』の軍事衛星のハッキングの二番煎じにしか見えん。アバンタイトルの脱出アクションで、落下するセスナに向かってボンドがパラシュート無しでダイブして乗り込むし(涙)。だから、ボンドは「無理」はしないんだってば!! 死んだら女王陛下にお仕えできなくなるので、ボンドは命を粗末にはしないはず。このアバンでテンション下がりまくり。敵の基地に乗り込む前に、海岸でたたずんで自分の存在意義に疑問を投げかけるボンドも、一番見たくない姿。「お前の存在意義は、女王陛下の犬であることだ!」と拳で語ってやりたくなった。こういったドラマもあって良いと思うが、必要以上にウェットに描いているのがマズい。さらりと流してこそ、逆にボンドの孤独感や使命感が映えるというもの。
 アクションは工夫と連続性がもっと欲しい。テーマ曲の直後のカーチェイスも、ただのスピード狂なだけだし、その後のゴールデンアイが奪われるまでのダラダラとした展開もつらい。殺し屋オナトップとの対決もマヌケだし、クライマックスの秘密基地でのアクションも、スピード感はあるのにメリハリに欠くという奇妙な結果に… 結局、中盤の戦車アクションのみ007らしい。
 映画を盛り下げるのに貢献しているのが、エリック・セラのBGM。なぜ起用したのか理解に苦しむ。007イズムへの理解もないし、曲もメチャクチャ。セラ自身が歌うエンディングの曲に至っては絶句。シリーズ中で最悪のサントラだな。
 吹き替え版では、クールなブロスナンに田中秀行はぴったんこ。S・ビーンもFIXの磯部勉でありがたい。VHS版(DVDにも収録)だと、ビーン=小川真司で、前作までボンド役だった小川が悪役にまわっている居心地の悪さがあったので、ありがたい配役だった。

監督 マーティン・キャンベル
ピアース・ブロスナン(田中秀行)/ショーン・ビーン(磯部勉)/イザベラ・スコルプコ(日野由利加)/ファムケ・ヤンセン(小山茉美)/ジョー・ドン・ベイカー(島香裕)/チェッキー・カリョ(糸博)/ゴットフリード・ジョン(金尾哲夫)/アラン・カミング(牛山茂)/デスモンド・リュウェリン(田口昂)/ジュディ・デンチ(森田育代)

予告編↓
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2012年01月23日

007/消されたライセンス:VHS版吹き替え

 レンタルビデオ業界に斜陽の陰がさしはじめた頃、ワーナー・ホームビデオからリリースされた本作で、007シリーズ初のビデオ用吹き替え版が制作された。ダルトン=ボンドは、田中秀行。後にテレビ版吹き替えで、ピアース・ブロスナンを担当することを思えば、運命的なものを感じる。
 が、野性味が残る風貌のダルトンに、田中秀行の声はちょっと上品すぎる。ブロスナンならぴったりなのだが… ダヴィの若本規夫は完璧。K・ローウェル=勝生真沙子は、テレビ放送の初回版でも続投。贅沢なのは、『リビング・デイライツ』の日曜洋画劇場版でダルトンを担当した鈴置洋孝が、まだペーペーだったころのベニチオ・デル・トロをアテている点。
 本吹き替えで最も問題なのは、007を「ゼロゼロセブン」と読ませている点。これは絶対ありえない。翻訳・演出家には007愛は無かったようだ。

監督 ジョン・グレン
ティモシー・ダルトン(田中秀行)/キャリー・ローウェル(勝生真沙子)/ロバート・ダヴィ(若本規夫)/タリサ・ソト(伊倉一恵)/アンソニー・ザーブ(沢木郁也)/エヴェレット・マッギル(戸谷浩次)/デスモンド・リュウェリン(槐柳二)/デヴィッド・ヘディソン(大滝進矢)/ベニチオ・デル・トロ(鈴置洋孝)/ドン・ストロード(戸谷浩次)/ウェイン・ニュートン(飯塚昭三)/アンソニー・スターク(松本保典)

メイキングの一部↓
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2012年01月22日

007/消されたライセンス:日曜洋画劇場版

 またまた日曜洋画劇場でキャスト一新による新録。前作をダルトン=鈴置洋孝で収録しながら、なぜか山寺宏一にばとん・タッチしているのが不思議。R・ダヴィは初回放送版と同じく麦人が担当しているが、日曜洋画のダヴィは若本規夫がFIXじゃなかったっけ?
 山寺=ダルトンは、カッコ良く演じようという気負いが目立ってしまい、ボンド声優としてはいまひとつ。他のキャスティングは無難な配役。A・ザーブの有本欽隆が、さすがベテランの迫力で目立っていたくらい。

監督 ジョン・グレン
ティモシー・ダルトン(山寺宏一)/キャリー・ローウェル(田中敦子)/ロバート・ダヴィ(麦人)/タリサ・ソト(金野恵子)/アンソニー・ザーブ(有本欽隆)/エヴェレット・マッギル(水野龍司)/デスモンド・リュウェリン(田口昂)/デヴィッド・ヘディソン(仲野裕)/ベニチオ・デル・トロ(成田剣)/ドン・ストロード(中田和宏)/ウェイン・ニュートン(石塚運昇)/アンソニー・スターク(平田広明)

主題歌↓
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